436
2003/05/06(Tue) 13:45
パトロス
Re[435] インバージョン法の矛盾再考
ノリマン様 インバージョン法は地震計の発明・改良とも関連しているのですね。ゴールド博士でも「地震学のテーマが開花し、研究が成功を収めた・・・」のは地震計の発明にあるとして次のように述べているくらいです。([425]参照)「地震計が発明されたため、たとえ震源から遠く離れている地点であっても、記録をもとに極めて詳細に研究することができるようになった。地震学のテーマがいっせいに開花し、地震そのものばかりではなく、地球内部の構造についても大量の情報が得られるようになった。 この方面の研究が成功を収めたことと裏腹に、・・・・・」とあります。
さて、インバージョン法はこの地震計の記録と計算結果が合致するように、地球内部の物理条件を変えていくという手法です。だから計算結果と観測結果がぴたりと一致するのは当たり前のことなのです。「既に実証されたものを否定するとは何事か、何を寝ぼけたことを言ってるの?」などという批判があるのでしょうが、本当に「実証された事実」かどうかは解析手続きの妥当性を吟味しなければ、単なる錯覚かも知れないのです。それでは、東海大学出版の「新版地学教育講座」第5巻「地球内部の構造と運動」からインバージョン法の概略を紹介します。
4.地球内部のトモグラフィ(p.19より引用)
JBモデルやGRモデルからiasp91モデルにいたる過程は、球殻構造モデルの枠内で信頼度の高い速度分布を求める研究である。一方これと並行して、1970年代の中頃から、地球内部の構造が球殻構造モデルからどれだけずれているかを明らかにする研究が始まった。それは、低速度層の問題が示すように、地球内部の構造に地域性があることが明らかになったからである。この研究は、医療の分野でおこなわれているCTスキャンのように、地球内部を断面に分けて画像化するもの(トモグラフィ)であり、インバージョン法という独特の方法が用いられる。以下この節では、まずトモグラフィのもとになるインバージョン法について簡単に説明し、次いで最近の代表的な成果を紹介する。
(1)インバージヨン法 インバージョン法というのは、ある構造モデル(初期モデルという)を出発点として、それを観測データに合うように修正するための一連の系統だった手続きのことである。具体的な手順は,広く用いられる走時データによるブロック・インバージョン法を例にとると、次のようになる。
@多数の地震の、多数の観測点における地震波の走時データを集める。これを観測走時という。
A地球内部を多数のブロックに分け、各ブロックの地震波速度を適当な構造モデルにもとづいて仮定する。これが初期モデルである。
B初期モデルにおいて、地震波が各震源から各観測点まで伝わるのに、どのブロックを通ったかを調べ、走時を計算する。これを理論走時という。
C理論走時と観測走時との差がもっとも小さくなるように、地震波が通ったブロックの速度を修正する。こうして、地球内部の各ブロックの地震波速度が、初期モデルに比べてどれだけ修正されるかがわかるので、それを画像化したものがトモグラフィ像である。
(中略)以上の説明では、走時データを用いたブロック・インバージョンを例にとったが、走時のかわりに地震波の波形が用いられたり、地球内部をブロックに分けるかわりに、特殊な関数を用いて速度分布を表現する方法が用いられたりする。いずれの場合でも重要なのは、何を初期モデルとするかという問題である。まず、計算の結果、モデルが大幅に修正されるような場合は、初期モデルが不適当と考えられるので、適当なモデルととりかえる必要がある。一方、わずかな修正ですむ場合でも、仮定した初期モデルが現実の構造に近いとは限らず、モデルが違えば異なるトモグラフィ像がえられる可能性がある。
(中略)従来の研究では、JBモデル、ヘリンのモデル、PREMの中の等方的モデルなどを初期モデルとするものが多い。
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[解説]JB(Jeffreys−Bullen)、GR(gutenberg−Richter)、Herrin、PREMなどの初期モデルはすべて、地球内部を固体であると仮定しています。マントルが熔融物質であれば、初期モデルを取り替えなければなりません。現在の地震学の成果と言われている地球内部の知見は、全て根底から覆ってしまうのです。地球内部が本当に固体であるかどうか誰も見た人はありません。つまりマントルは固体であるという初期モデルが正しいかどうか、検証されていないはずです。むしろ熔融していると考えたほうが合理的な事象(地球の固有震動など)があるということです。プリュームテクトニクスに関しても、解析手続きがおかしいことを、ニューオフィス11に述べてあります。
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