新・地震学セミナーからの学び
49 岩漿(マグマ)貫入説から学ぶ
石本博士のマグマ貫入理論は今では地震学の解説書から姿を消しております。「押し円錐理論」とも関連するこの学説は大変直感の優れた学者であったから思い付かれたものだと思います。今では絶版になっている笠原慶一先生の「地震の科学」から、抜粋して紹介したいと思います。「48 押し引き分布の形状の違い」と合わせて学んでみてください。

岩漿(マグマ)貫入説 

弾性反撥説の着想が、大地震の測地学的な特徴(断層とか三角点の移動等)に基づいているのに対して、岩漿貫入説は地震初動の押し引き分布からヒントを得たものと云うことができましょう。

この学説はその名の示す通り、地下のある部分に岩漿の溜りがあるという仮定の上に立てられています。岩漿には相当量の水や炭酸ガスその他のガス成分が含まれていますが、温度が低下すると鉱物成分が析出し始めるために余分なガス成分は分離するようになります。この分離作用がきわめて急激に行われると岩漿溜りの圧力は大幅に増大し、遂にはまわりの岩石の弱いところを破って岩漿を突入(貫入)させることになります。その結果として突入の方向に押し波が射出され、一方岩漿溜りの内部は圧力が急に減りますから横方向には図のような引き波が現れることが想像されます。こういう立場から図のような震源力の型が説明できるのではないかというのが石本博土の岩漿貫入説です。従ってこの学説では、地殻変動は岩漿の運動によって二次的に起きる現象と考えられています。

地質構造を調べて見ると、写真(出典は別から)のように、ある岩盤の中に別の種類の岩が貫入している実例がありますから岩漿貫入説にも確かに一理あります。しかしこのような岩漿運動が、大地震の原因として受け入れられるためには、大地震のエネルギーや震源の大きさに関する私たちの知識(第W章参照)に矛盾しないことが必要です。これらの点に関する定量的な裏付けは、まだ岩漿貫入説に与えられておらず、この辺に疑間が残されているわけです。

岩脈:地層を貫いて別の岩石が貫入している。
下線を施した部分は、そのまま鵜呑みにするわけにはいきません。圧力が増大するのは水が熱解離して酸素と水素の混合ガスを発生させること、そのガスが原子状態であるならば(ブラウンガスと言ってもいってもいいですが)、圧力はさらに大きなものになることが原因です。この高圧力で、岩盤にひび割れが出来れば、それが原因で平衡破綻型の爆発が生じ(地震の第一段階)ます。ひび割れによる圧力低下や温度回復による高温が今度は解離ガスに着火して、爆鳴気爆発(爆縮)と言われる結合反応が起こります(地震の第二段階)。

大地震を発生させるエネルギーとは核爆発を思わせるような巨大なエネルギーですが、これがプレート間の摩擦と言う物理エネルギーから生まれるとは思われません。しかもプレート境界で発生する物理エネルギーが遠方まで影響を与えるとは思えません。「断層地震説では、遠方からはたらく外力を想定しているのに対して、石本説は震源域近くにはたらく具体的な力を重視している。」(セミナー[1020]参照)という解説がありますが、解離ガスの化学反応エネルギー、あるいは、山本氏が述べておられるようなブラックライトプロセスという原子水素の核融合反応エネルギーを採用する方が、エネルギー論的にも合理的な感じがいたします。

概略の話ですが、化学的エネルギーは物理的エネルギーの一万倍あると言われ、核エネルギーはさらに化学的エネルギーの一万倍あると言われます。山本氏によればブラックライトプロセスで放出されるエネルギーは化学エネルギーと核エネルギーの中間的なものであるということです。

このように、マグマを貫入させるエネルギーが何であるのかが分からなかっただけで、それを爆発という化学エネルギーと考えれば、地層を横断して別の岩石が貫入している岩脈という地質学的知見をも説明できる立派な内容を石本理論は持っております。

また48で学んだように、地表に現れる断層の形状がなぜ楕円型、双曲線型、あるいは四象限型になるのかということも、無理なく説明できる素晴らしい内容を含んでおります。

ライブラリーの解説も参考にしてください。

http://www.ailab7.com/lib_016_data.html