前日に戻る 
321
2003/01/20(Mon) 16:40
石田 昭
地軸逆転論
「逆転現象は、ほぼ正確に南北の逆転だけです。磁極が中途半端に中緯度や赤道地域にシフトするような現象は知られていません」の件ですが、長期間の明確な南北逆転のみを取り出した図が縞模様になっているのだと思います。短期間のEventや不安定なExcursionなどは省略してあるはずです。また磁極は現在の位置からずいぶん離れたところにあったことも事実だと思います。正確な南北逆転しか起こらなかったと言うのは誤解だと思います。カオス現象の件は力武モデルのことかと思いますが、「しかし、地球核内で起こっているダイナモ作用が、古地磁気学が示す磁場の逆転を実際に引き起こすか否かは必ずしも明らかでなく、今後の研究にまたねばならない。」といわれているようです。重心移動が原因でポールシフトする件は「地球深層ガス」を書いたトーマス・ゴールド博士もそのように考えているようです。その他の地軸逆転の証拠はこれから発見されるのではないでしょうか。たとえば、南極大陸に恐竜の化石が発見されたというニュースも、その一つだと思っています。私は海洋底の地磁気の縞模様こそが地軸逆転の証拠だと考えているのですが・・・。インド亜大陸の伏角変化は調査に好条件のデカン高原があったから、精密調査ができたということではないでしょうか。

322
2003/01/20(Mon) 19:29
とりまき
Re:[321] 地軸逆転論
大陸移動の効果が無視できる5百万年前以降のデータだけで議論しましょう(そうしないと石田先生はプレートテクトニクスを認めていらっしゃらないようですから混乱の元です)。最新の古地磁気編年によれば、この間に20回の逆転が起こっています。重要なのは、この間に世界中の岩石に記録された古地磁気は一度も中途半端な方位(例えば現在の低緯度方位)を向いたことがないという事実です。かっての磁極は、地軸の示す極から30度以上離れた事がありません。私が言う「中途半端な方位」とは、これ以上離れた方位の事です。世界中の同時代の岩石は、一様にその形成当時の磁極を向いています。しかし、プレートの運動(大陸移動)が無視できない程太古の時代にさかのぼると、岩石古地磁気は、現在のそれとはかなり離れた方位を向いている事があります。その場合には、同時代の岩石であっても別々の方位を向いている訳です。その事が、大陸がお互いの位置関係を変化させて来た何よりの証拠です。なお、力武さんは「ダイナモ理論」で有名かもしれませんが、流体核ダイナモの電磁気回路の理論からカオス状態を導き出したのは、河野さんです。

>私は海洋底の地磁気の縞模様こそが地軸逆転の証拠だと考えているのですが・・・。

 海洋底の地磁気縞は例えポールシフトであっても海洋底の拡大なしには形成され得ないと思いますがいかがでしょう。

>インド亜大陸の伏角変化は調査に好条件のデカン高原があったから、精密調査ができたということではないでしょうか。

 そうではありません。古地磁気測定から大陸(プレート)の移動が証拠付けられた例は、何もインドに限りません。その前に、デカン高原が特別に精密調査に向いていたとして、何回も極性の南北逆転を繰り返しながらその伏角の絶対値ががなめらかに低角度へと変化して来た事をどう説明しますか? 世界中の海洋底の国際深海掘削計画で得られた膨大なボーリングコアは、深海底が擾乱のない堆積層からなっている事で最も優れた古地磁気データを大量に供給しています。インド洋の海洋底に堆積した深海粘土の古地磁気もまた、インド洋の拡大とインド亜大陸の北進を指示しています。また、新しい所では、約千5百万年前頃に日本海が開いて日本列島が折れ曲がりながら太平洋側へ張り出した事も,古地磁気の偏角の変化からわかっています。古地磁気のデータは、海洋底の年齢極性、地磁気縞の方位、海嶺軸とトランスフォーム断層の方位、ホットスポットトラックの方位と年齢極性などのあらゆるデータと共に整合的に解釈可能なもので、古地磁気のデータだけが一人歩きしている訳ではありません。

323
324
2003/01/20(Mon) 20:53
石田 昭
Re:[322]地軸逆転論
論点がたくさんになったようですが、絞ります。
1、私は大陸移動が無かったとは思っていません。アフリカと南米が分裂・移動したのは確かでしょうし、それはこの500万年内のできごとだと思います。ただプレート論で言うような一定速度で変化するという斉一説ではないと思っています。分裂・移動はあるでしょうが激変的変化だと思います。

2、磁気逆転が地球の磁気だけ単独にでも逆転可能であるとする考え方が納得できないのです。太陽磁場とは無関係に、地磁気だけくるくると向きを変えることはできないと思います。現代版天動説と言っている意味がお分かりいただけないでしょうか。地球が姿勢を変えることなく、磁場だけを変えて太陽磁場の中で、回転できるということはありえないと思います。これが最重要論点であると思います。

3、地磁気の縞模様は、海底の表皮ともいえる部分に記録された縞模様です。地殻本体は海底から10km〜30kmという深部にあるはずで、表皮と地殻が一体となって移動しているわけではありません。プレート説は一体説ですが、それですから海底寿命2億年説がうまれるのです。しかし、グランドキャニオンが海底にあった2.5億年前を想定すると、その時一番古い海底はその時点から2億年前のもののはずです。それが浮上したグランドキャニオンにどうして6億年も前の地層があるのでしょうか(4.5億年なら分かりますが)。これは海底寿命2億年説と矛盾します。海洋底拡大説は海底表皮のデータからの推理です。

4、深海底の膨大なボーリング資料云々も同じです。ボーリングで採取できるのは表皮の堆積層のはずです。海底表皮の観察から地殻の動きを診断するのは、皮膚科医が骨の癌を診断するようなものです。細かなデータは掌握しておりませんが、重要ポイントは以上かと思います。

325
2003/01/21(Tue) 08:01
とりまき
Re:[324]地軸逆転論
1:アフリカと南米沖の大西洋の海洋底は白亜紀初期で1億数千万年前ですから、分裂を開始したのは500万年よりづっと古い時代の事です。海洋底玄武岩直上の化石も、放射年代測定値も多数あって、証明済みの事です。特に、大西洋中央海嶺から両側へ対称的に年齢が古くなっている事が需要です。500万年以内という証拠はどこにありますか?

2:太陽磁場の中で地球磁場だけが独自に変化する事ができないとの論点が最重要だと主張なさりたいのなら、地球の周りの太陽磁場の強度がどれくらいで、その中での地球磁場との相互作用で生じる力がどれくらいであるのかをお示し戴かなければ、現にポールシフトの証拠が無い以上納得する人はいないと思うのですが・・・

3:地震波探査から海洋底地殻の厚さは平均6kmで、その下はマントルであることがわかっています。グランドキャニオンは大陸地殻の上に形成されていますから、海洋底地殻とはひとまず関係がありません。大陸地殻でも海面下に没することもあるのでお間違えなきよう。大陸地殻は厚くて軽いのでマントルの中へ沈み込む事ができませんが、薄くて重たい海洋底地殻は、海洋プレートと一体となって海溝から沈み込む事ができます。海洋底地殻は中央海嶺の拡大によって更新されるので、2億年より古いものは存在しない訳です。それより、地磁気が表皮だけに記録されるとして、ポールシフトによってどのように縞模様が形成可能なのですか?

4:深海掘削の成果について全くご存知ないようですね。ボーリングでは、堆積層の下にある海洋底地殻本体の岩石も多量に採集されています。現在の国際深海掘削計画(ODP)のLegナンバーは200を超えましたから、これだけでも千本近いボーリング孔が掘られた事になります。特に、中央海嶺に近い部分は年齢が若く、堆積層が薄いので、すぐに海洋底地殻本体の玄武岩層につきあたります。現在のボーリング最深記録はペルー沖での2,100mです。玄武岩層の下のドレライト・斑れい岩層まで採集され、それらの古地磁気、放射年代などが測定されています。海洋底地殻全体の実に1/3の厚さまでの部分が現に採集されており、決して「表皮」だけではありません。

326
2003/01/21(Tue) 10:45
石田 昭
Re:[325]地軸逆転論
とりまき様  討論をされる場合は、相手の論旨をよく理解した上で行って頂きたいと思います。これまでの討論の中身も今から行う中身もニューオフィスに開示してあります。そうしないと無駄の多い論議になってしまいますのでお願いします。

さて、私がHPを開設したのは、地震予知ができない地震学に間違いがあることがスタートです。プレート説に基づいている地震学の間違いを説明するために地球論にまで立ち入らざるを得なくなったわけですが、一番訴えたいことは地震学の間違いです。その中でもここで関係するのは地殻の解釈です。玄武岩を地殻の主要部分とは思いません。プレート論者がマントルと呼んでいる部分の上方、MOHO面の下に主要部分(地殻第二層)があります。ここを通って、地震波は伝播します(ニューオフィス8)。マントルは対流現象のある液体です。私は固体説を否定しています。地震学の前提である地球内部論やマントルトモグラフィーの前提であるインバージョン法は固体論でないと成立しませんが、それを否定しています。(ニューオフィス1113参照)次に各論点について述べます。

1、地球学の関しては不明な部分が沢山あるのではないでしょうか。「大西洋中央海嶺から両側へ対称的に年齢が古くなっている」件は海嶺から噴出したマグマが流れ出している現象でしょうが、ニューオフィス914に解説してあるように、南部には縞模様が70ユニット以上ありますが、北部には1ユニットもないエリアがあります。ここは両大陸が繋がっていた場所でしょう。縞模様ができるのは3、とも関連しますが地軸が逆転して、表皮のマグマに新しい地磁気が記録されるからです。海洋底も一様に広がっているわけではないようです。500万年にはこだわっておりません。もっと最近のことだと思っていますが。ここでは本質的なことではありません。

2、中世にガリレオたちが「地球が回っている証拠を示せ」と言われて困ったように、私も困っていますが、太陽とは独立して、磁場の発生も回転も地球の自由だという考えにはなれません。たとえ納得される方が今はいなかろうとも・・・です。磁気の縞模様がポールシフトの証拠だと信じてくださる人は別ですが。

3、「大陸地殻でも海面下に没することもあるのでお間違えなきよう.」ですが、ひとまず関係ないというグランドキャニオンが今度沈下したときには、6億年の地層はどうなるのでしょうか、とたんに海洋地殻の性質を帯びるのでしょうか。グランドキャニオンは少なくとも3回の隆起、侵食、沈下、の過程をたどっています。その原動力は何だとお考えでしょうか。プレートは移動だけでなく浮沈することを認められるようですが、その原動力を説明し、プレート移動・浮沈説としなければおかしいのではないでしょうか。浮沈の原動力を私は熱解離した爆鳴気の爆発と考えています。沈み込みと言う概念は流体力学の概念です。固体マントルならば固体力学で考えるべきでしょう。固体力学には粘性とか浮力という言葉は使えません。縞模様の件は2、で述べましたが、質問の意味がわかりません。「マグマが固まるときに磁気を記録する」でよいのではないでしょうか。

4、玄武岩層が地殻の本体とは考えていません。若いというのは表皮の部分だと考えています。

327
2003/01/21(Tue) 14:48
とりまき
Re:[326]]地軸逆転論
石田先生:「ニューオフィス」の、関係する部分は読んでいたつもりです。議論を拡大したくなかったのですが、仕方ありません。大変失礼ながら、これまで議論がかみ合わなかった所があるとすれば、先生の使用される学術用語が、学界の用法とは異なって、勝手に定義変更されている点に起因していると思います。新しい概念を提出されるのなら新しい用語を提案なさってはいかがですか? 「地殻」という言葉自体もそうです。例えば、グランドキャニオンは大陸地殻にありますが、この地殻が海面下に没したとしても大陸地殻のままです。現在海底下にある大陸棚地域も殆ど全て大陸地殻からできています。大陸地殻と海洋底地殻の定義は、海に没しているかどうかとは直接関係がなく、その構成によっているのです(もっとも海洋底地殻は現実には全部海の底ですが)。 さらに深刻なのは「固体」と「液体」の定義です。現在、超高圧相平衡実験から、マントルはその深部まで基本的には結晶の集合体である固体である事がわかっています。これは日本国内および日本人の在外研究者達の研究が最も進んでいる分野です。全ての固体は外力に対して弾性、塑性、粘性の3種の変形応答をします。地球が自由振動をするのは、その弾性的性質の現れです。マントル内の深発地震は、その塑性的性質の現れです。 先生には固体が粘性流動する事が信じられないのかもしれませんが、氷河が流れることからもおわかりいただけると思います。結晶の流動則は、金属加工の分野から発展してきましたが、基本的には動的再結晶、粒界移動、結晶内滑り、粒界滑りの機構からなっています。また、流体の染み込んだ物質では圧力溶解も重要です。一般的には絶対温度で表した物質の融点の90%を超える温度で、結晶は急激に軟らかくなって長時間の内には(飴のように)流動する事が実験的にも理論的にもわかっています。マントルは正にそのような状態にあるのです。 液体であれば横波は伝播しない筈なのに、マントル内で起こった深発地震が地表で観測されるのは、それが固体だからです。 さらに、水の解離爆発による地震発生モデルですが、「爆発現象」による地震波は、全観測点でP波初動が「押し」になり、S波が顕著ではないという明瞭な特徴があります。これは、地震計に観測される振動データから地表付近の発破によるノイズを除くために有効に活用されているのですが、深発地震にはそうした特徴は認められなく、実際には全て逆断層型の地震波となっています。 もう1点、先生の地震波の伝播モデルで地震波が「地殻の第二層」をグラスファイバーのように伝播するのなら、地震の規模によってシャドーゾーンの範囲が変わってくる筈ですが、現実には地震の大小に関わらずその範囲は103度〜143度と決まっています(現在の地震計は大変高感度です)。 他にも多々ありますが、ひとまず「ニユーオフィス」の内容については、これだけにしておきたいと思います。

 さて、私の疑問の出発点に関わる議論は、上記の事柄とはとりあえずは無関係の筈です。話を元にもどしましょう。デカン高原の古地磁気データが何回も極性の南北逆転を繰り返しながらその伏角の絶対値ががなめらかに低角度へと変化して来た事実を、先生の「ポールシフト」理論ではどのように説明可能なのか全く理解できません。 未だ解答がないようなので繰り返しました。 最後に、深海掘削などから、大西洋の底の玄武岩層直上の堆積物に含まれる化石や玄武岩そのものの放射年代の測定から、大西洋の玄武岩層の形成年代がほぼまんべんなく突きとめられている事はご存知でしょうか? その他の大洋底の玄武岩層の年齢も、同様にほぼまんべんなく突きとめられている事をご存知でしょうか?

328
2003/01/21(Tue) 17:01
石田 昭
Re[327]地軸逆転論
1、グランドキャニオン、カナディアンロッキー、ヒマラヤ、アンデス等々が海底にあったのは事実ですが、それも元々大陸性地殻だったものがたまたま海底にあっただけで、(説明を頂いていない原因によって)浮上したということになるのでしょうか。都合のいい解釈に思えてなりません。

2、「全ての固体は外力に対して弾性,塑性,粘性の3種の変形応答をする」件ですが、塑性、粘性を有しているときには剛性は無いのではないでしょうか、剛性が無いのにS波が伝わるとは思えません。氷河が流れるのは、氷は圧力によって、解ける性質があるからだと思います。それが潤滑油の働きをして流下するのではないでしょうか。でも固体が流動化するのを否定しているわけではありません。「結晶は急激に軟らかくなって長時間の内には(飴のように)流動する」のは事実でしょう。そのように高圧高温下では物質は熔融して、剛性を持たないと思っているのです。ゆえにP波の一部を除いてマントル内を通過できないと思っています。

3、マントル内の深発地震が地表に伝わるのは、地殻(勝手に定義しているということですが、字の意味としてはぴったりです。プレート説ではどこまでが地殻なのかはっきりしません。)まではP波として伝わるのだと思います。地殻に届いてからはS波が発生します。決して固体マントル(しかも塑性を有するという)をS波として通ってくるのではありません。S波は剛性が無いと伝わりません。断層の形状は区別しても意味がないと思いますので、逆断層型地震波というものがどんなものなのかは知りませんが、発破の波動と違うのはこのためでしょう。シャドーゾーンの件は、マントル熔融論の立場での説明としては一番納得がいくものと考えています。マントル固体論(誤解があれば、マントル剛性保有論)を否定する立場での仮説です。

4、最後にポールシフトの件ですが、ご理解が得られないのは、地軸が逆転するだけとお思いだからでしょうか。ポールシフトは地軸が逆転後に、太陽磁場とつりあう新しい磁場(太陽に対しては以前と同じ方向)が発生します。岩石はその磁場を記録しますので、磁極だけが逆転すると考えておられる仮説と結果として磁気記録は同じになります。地球の姿勢はもちろん変化していますが・・。低緯度に移動するということは、海洋底の縞模様があれだけ激しく回転しているのに、一定の進路で現在の磁極へ移動したとは信じられないのです。もっとデータを集めれば説明できない傾向の岩石が存在するのではないかと思っています。

繰り返しますが、重要な問題は地震予知を前進させるための努力です。古い考え方(測地的予知の方法)で何等の成果が上がらないのならば、新しい考え方を採用して、地震予知を進展させなければなりません。その一環として、地震爆発論を、なるべく理解しやすいように、解説しているわけです。

地球学という大きな問題を全て納得できるまで明らかにしてから、予知法を修正しようとすれば、いつまでたっても、予知の向上は望めません。どうかご理解をお願いします。これには膨大な地震関係予算を投資しているのに、成果があがらないことに対する「税金の無駄使いを止めよ」いう国民感情を理解しておかなければいけません。とりまき氏がどのようなご職業かは存じませんが、その豊富な知識を生かしてぜひ地震予知の向上に尽力していただきたいと思います。

329
2003/01/21(Tue) 17:35
石田 昭
外出します
とりまき様  これから会合で外出します。ご返事を頂いても拝見するのが、遅くなると思いますのでご了承ください。メールアドレスをいただけるとありがたいですが・・・。
330
2003/01/21(Tue) 19:57
とりまき
Re:[328] Re[327]地軸逆転論
1.またまた新たな論点をこの場に持ち出されましたが、海成層からなる山脈や高山台地ができる原因は大まかに3つに大別されます。A:ヒマラヤ型(大陸衝突型)、B:コルディレラ型(付加造山型:カナディアンロッキーとアンデスの一部を含む)、C:グランドキャニオン・ギアナ高地型(大陸の昇降運動型)です。なぜ3つに大別できるかと言うと、それぞれの中身(岩石・地層の構成要素と変形・変成履歴)が全く異なっているからです。それらを混同してはいけません、いずれも中身の具体的で詳細な研究から生まれた理論ですが、詳しくは別の機会に(必用があれば)解説いたします。

2.岩石の高圧下での変形実験による応力ー歪曲線をご覧になったことはありませんか? 岩石は、変形の初期段階ではフックの法則に従う弾性歪のみを示します。この時に蓄えられる最大の弾性歪はコンマ数%程度です。大変小さいように誤解されがちですが、これでも、百kmオーダーの範囲にあるを地殻を曲げて、その先端を数十m変位させるには十分過ぎる大きさです。これが海溝型地震の弾性反発モデルの根拠になっています。 さらに差応力を増大させると応力ー歪曲線は直線から外れてきます。岩石中に微小な割れ目が生じるからです。やがては限界に達して急激に歪量が増大するポイントにさしかかります。塑性の示す降伏点です。低圧下(地表近くの条件)では、ここで岩石は破壊して、強度を失ってバラバラになってしまうのですが、高圧下(地震が起こる深さ)ではそうはなりません。高圧力のために割れ目が押しつけられたままになっているからです。この事を破壊理論では、破壊強度と摩擦強度がほぼ等しくなっている時の現象と説明します。これがプレートどうしが力学的にカップリングして「ふんばっている」理由です。降伏点を超えると、応力ー歪曲線は水平になり、一定の応力下で時間と共に歪みがどんどん増加する粘性を示すようになります。この状態での多結晶体の変形機構が、No. 327で書いた内容です。以上の説明から、粘性を有しているときにも剛性のある事がおわかりいただけたでしょうか? 先生は、『「結晶は急激に軟らかくなって長時間の内には(飴のように)流動する」のは事実でしょう』と書かれる一方で、『そのように高圧高温下では物質は熔融して、剛性を持たない』とも書かれていらっしゃいます。熔融したらもはや結晶ではありません。溶融前の結晶状態でも流動する事を認めるならば、熔融を仮定しなくても良いではありませんか。繰り返しますが、超高圧実験によりマントルが固体である事は証明されています。

3.証拠はないが、P波がS波に変換されると「仮定する」という事ですね。ご存知のようにワダチーベニオフゾーンは、海溝からマントル下まで連続して続いています。P波とS波とでは、振動数(P>S)も振幅(P<S)も全く異なります。先生の理論では、「地殻」中と熔融したマントル中で発生した地震波は、互いに全く異なった特性を持たなければならない筈ですが、ワダチーベニオフゾーンに沿って発生する地震にそうした不連続性は認められていません。それより、マントル熔融論によるシャドーゾーンが、「光ファイバー」による到達限界によって生じるのなら、その角度は地震の規模によって異なっていなければならない筈という、私の大きな疑問についての解答をお待ちします。

4.インドの古地磁気データは信じられない、もっとデータを集めれば矛盾する事実が出る筈だという事ですね。私がインドの北進の問題にこだわるのは、この点についての古地磁気学者達への先生の論難が「詐欺」だとか「功名心がなせる業」といった悪罵を用いてなされているからです。公表された観測結果を批判するには、新たな観測事実を提出する事が必用だと思います。なお、インド洋の地磁気縞は「激しく回転」などしていなくて、インドの北進を正しく証明していますので念のため。その他の海洋底の地磁気縞とプレート運動との関係については、「ニューオフィス」のあちこちに誤って解説されていますので、別の機会に触れることになるでしょう。 私は、地震予知を前震させるためには、いかに困難でも「科学の方法」によらなければならないと信じる者です。「科学」とは事実に忠実な理論を生み出す方法論、現実世界を客観的に理解する方法論だと思っています。雑誌「ニュートン」などの一般向け解説書の中にある説明の不備などに振り回されずに、もっと生のデータに触れられる事をお薦めします。メールアドレスをとの事ですが、一度に沢山の書き込みをして随分ご迷惑をおかけしているようです。この書き込みを最後に、今後この場で先生の方からお声がかかるまでは、しばらくおとなしくしていようと思います。ただし、この書き込みに対するコメントだけは頂戴したく、よろしくお願い致します。

前ページへ戻る  次へ進む

索引へ戻る