新・地震学セミナーからの学び
28 大地震で火災旋風の発生する場所
図−1は大正震災志(内務省社会局編纂)に載っている関東大震災時の東京大火災の調査報告です。火災旋風が発生したのは、次の5箇所であることがわかります。北から順に、亀岡町、向島小梅町、専売局製造所高等工業、被服廠跡地、松井町です。いずれも、隅田川に面していて、地下には厚い砂礫層が圧密沈下することなく堆積している地域だと思います。つまり、大地震時に旋風が発生するのは、地下から噴出する解離ガスが大きな原因になっているのではないかと考えられます。解離ガスは水が熱によって酸素ガスと水素ガスとに解離したもので、爆鳴気とも言われるように、大音響とともに、爆発する危険なものです。この図面を見ると、東京における火災は隅田川が形成した砂礫層地域に多く発生しており、山の手地域には少ないことが分かります。凡例にありますように、三日にわたって、東京の街を燃やし尽くしたようです。発火点は数え切れないほどたくさんあります。
図ー1 関東大震災で発生した東京の火災旋風発生点5箇所、いずれも隅田川に面した砂礫層地域にある。
図ー2 横浜市内の火災旋風発生起点、東京よりもはるかに多くの旋風が発生しているのがわかる。いずれもかつて河川が運んだ砂礫層地域に面しているのではないかと思われる。
図ー2は横浜市内の旋風発生起点を示したものです。東京では5箇所でしたが、横浜の場合にははるかに多くの旋風が発生したようです。この図面にも発表禁止という赤色の文字が見えましたので、公表されること無く今日まで来たのでしょうか。これは横浜の南部地域ですが、かつては大岡川や中村川などから大量に砂礫が運ばれ、その砂礫層の上に町が形成されてきたのでしょう。その流れに沿って、旋風が発生しているように思われます。
図ー3 同じく横浜駅あたりの火災旋風発生起点、横浜駅はまだ存在していない。神奈川停車場の名前がある。 
図ー3は横浜北部地域の旋風発火地点を示したものです。現在の横浜駅はまだないようで、神奈川停車場の名前があります。ここは、帷子川、その支流の新田間川などが運んだ砂礫層の上に形成された地域です。やはりここも、砂礫層の上で解離ガス噴出による旋風が発生しているように思われます。今後こうした視点からの防災対策も必要になると考えられるのですが、それにしても地震学の知識を入れ替えないといけないと思います。

学会とか公的機関においては、定説を入れ替えることは大変難しいと思いますので、個人的知識として、防災対策に生かしていただきたいと思います。

2009年2月15日追加:
http://www.youtube.com/watch?v=U8egXCMDPwg