新・地震学セミナーからの学び
32 日本海北部M7.1地震の不思議
セミナーの387および388でも「関東圏の地震は過大評価ではないのか」という議論が交わされましたが、7月27日の日本海北部M7.1地震も過大なマグニチュードのような気がしてなりません。セミナーの対話を抜粋しておきます。
387 ノリマン 関東圏はよく揺れる
福島県沖M5.9地震の規模が大きく見積もられ過ぎているのではないかという話がありますが、地震の揺れ方、揺れる範囲などから推定されているとしたら、関東圏の地震は過大評価(?)されることになりませんか。地震の規模は地域差修正しないとマグニチュードの真値にならないように思いますがどうでしょうか。
388 石田 昭 現状の地震学では修正は難しい
ノリマンさん 確かに関東圏では揺れる頻度が多いように私も思います。また揺れる範囲も広いように感じます。原因はライブラリー44、4546にあるように地殻構造に原因があるのだと思います。先日の2月4日東海沖M5.1深発地震でも、中部圏では無感でしたが、関東圏で有感になっていました。関東圏は敏感なのです。したがって確かに関東圏の地震は大き目のM値になる可能性があると思います。でも地殻構造の認識を変えない限り、修正は困難で、今の地震学に期待するのは難しいと思います。知識として持っておくことは大切かと思います。
さて、今回のM7.1地震では震央から800キロも離れた、岩手県や宮城県で大きな震度(震度3)となっています。より近くの北海道では震度1です。これは深発地震ではすべてそうなるのですが、地殻構造と関係があるのです。上の抜粋記事にあるようにライブラリー44〜46を開いてみてください、理由が書いてあります。
今問題にしているのは、マグニチュードの7.1という値についてです。あの神戸の大震災を起こした地震がM7.2です。殆んど変わらないくらいの巨大地震のはずですが、深度480キロという深部で爆発したのだから、地上での被害は無いのだ、ということは理解ができます。しかしそれにしても、大き過ぎるように思えてなりません。

そういえば、震度表示を人間の体感から機械による自動評価法にしてから、どうも震度が以前よりも大きくなるという話が報道されました。
マグニチュードの決め方が、基本的には震源から100キロ地点における地震計の振幅から決定するということですと、緻密な岩盤が続く地域と、柔らかな岩盤が続く地域とでは、地震計の振幅は大きく違ってきます。つまり現在のM値の決定方法では本当の意味で地震の規模を決定することは不可能のように思います。
ライブラリーにも述べてありますが、日本海溝から、大陸に向けて地殻は厚みを増しておりますが、東北関東圏は緻密な地殻岩盤が地上の近くに接していて、地震計を良く振らすのです。したがって、関東圏東北圏の地震は現状の決め方でいく限り西日本の地震よりも、過大評価されてしまうのです。
でもこれは、地震学そのものを改定しない限り、是正されることは難しいでしょう。

補足1

関東圏は緻密な地盤の上にあってよく揺れるのならば、地震に対して危険度が高いという矛盾した話になってしまうのではないか、という質問がありました。セミナーでのやり取りを紹介しておきます。

[563]  ノリマン 固い地盤は安全じゃないのか

関東・東北圏は緻密な岩盤が地上近くにあって地震の感度が良好で、よく揺れるという話はなんとなく分かる気がします。しかし、そうだとすると、地盤の緩い場所ほど大きく揺れて地震被害が大きくなるという事実との関係はどうなるのでしょうか。緻密な岩盤の上は安全地帯のように思うのですが、もう少し詳しい解説をお願いします。

[564]  パトロス 地震動の伝播特性と耐震特性

ノリマンさん 確かに分かり難い話でしたね。これは地盤が保有する振動の伝播特性と耐震特性の両面から説明しないといけませんね。
緻密で硬い地殻は伝播特性も耐震特性も共に高いものがあって、地震の波動を遠くまで伝えますが、耐震的にも当然安全性が高くなります。
一方脆弱な地盤は伝播特性も悪く、耐震性も劣るので、当然地震に対しては危険度が高くなります。
関東・東北圏の地盤はライブラリー36やニューオフィス8
http://www.ailab7.com/lib_036.html#lcn036
http://www.ailab7.com/mohoro2.html
に、模式的に示すように、橄欖岩からなる緻密な地殻の第二層が地表に接近しているために、伝播特性が良くなります。いっぽう、関西方面では第二層は地表から離れており、地表近くにあるのは花崗岩質の地盤で、伝播特性は悪くなるのです。
故に関西地方での浅発地震ですと、100キロ先の地震計を弱く震わせますが、関東圏の地震ですと、100キロ先の地震計を大きく振らす可能性があるわけです。したがって、関西圏の地震よりも、関東圏の地震は同じ規模の地震でも、よく揺れる、広く揺れるということを言いたかったわけです。
ひらたくいえば、関東の地殻はよく揺れるけれども、安全性もまた高い、ということです。もっとも、地表の近くでは、かつての河川や池などの存在、堆積層の分布状況、などのほうが地盤の耐震性には大きな影響を与えることは当然のことです。
以上を言い換えると、浅発地震に関しては、関東圏の地震マグニチュードは関西圏のそれよりも過大な数値になる可能性がある、ということです。
深発地震の場合には、橄欖岩の下にあるマントル内での解離ガス爆発ですから、天蓋とも言えるような橄欖岩の地殻第二層に爆発の振動を伝えるわけで、これが関東圏で有感地震になる理由です。

最初に述べたように、関西や、日本海方面で起こる深発地震では、大抵震央付近で無感地震ですが、関東では有感地震になります。深発地震の謎と言われてきました。