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46.深発地震の走時残差の謎


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 深い地震の場合には地震波の走時(走ってくる時間)が理論計算される値より早くなるという謎があります。浅い地震では理論計算の値と違いがないのに、深発地震にだけ見られる現象なのです。図は日本付近の深い地震53個に関する走時残差の平均値の分布です。

[解説]
 走時の残差が負になってしまうという謎も地殻が光ファイバー的構造になっていることから説明ができます。地震波伝播速度の速い高速度層(第二層)が関東は地表の近くにあるということです。

船長室にある伝声管みたいなものを想像してください。船内のいたるところの情報が、船長室にはいち早く伝声管で伝わってきます。第二層が伝声管の役割を果たしているのです。これを理解すると、日本海側の深発地震は、速度の速い層を伝わって、関東の太平洋側へ伝わってくることが謎ではなくなります。

浅い地震は第一層の弱い岩盤の中で発生し、深い地震は、第二層よりも下、マントルの中で発生するのです。だから、地震は天井にある硬い第二層を伝わって、いち早く関東地域に伝わってくるのです。しかも、異常震域で検討したように震度もおおきくなるのです。第二層を通過するときの速度は定説である八キロ/秒よりも速いのです。故に、走時残差が負になるのです。
 図をみると残差が一秒のライン、二秒のラインが日本海溝のラインと平行になっているのが分かります。日本海溝のラインから、大陸方面(日本海は大陸の池みたいなものです)に向けて、地殻は厚くなり、第二層も地表をはなれていくのです。地震に関しては感度が鈍くなっていくのです。海溝ラインに近い地域は感度良好(あまり嬉しくはないことですが)な地域なのです。これで深発地震の謎は解けていきます。  

(石田)

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