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31.プレートテクトニクスを信じない星野教授、杉山教授
 「私は遠州灘沖地震説を信じない」・・・・東海大学の星野通平教授は、彼の著書『駿河湾のなぞ』の中でそう述べている。地震空白地帯のことも、御前崎の沈下のことも承知の上での発言である。
 一八五四年の安政東海地震の震央が、遠州灘よりももっと西の方、熊野灘にあったと、星野教授は古文書の津波記録から判断している。歴史地震の震央の位置は、人によって判定がちがう。そうなると、遠州灘の地震空白地帯が果たしてあるのかどうかも、人によって判断がちがってくる。
 緯度観測所の坪川家恒所長は、御前崎の沈下は地震エネルギーの蓄積ではない、といっている。この地殻変動は傾動地塊としてふつうにみられる変動で、あえて異とするほどのものではなく、また、この区域の地震エネルギーは一九四四年の東南海地震によってすでに解消されており、地震の危険は去ったというのが坪川氏の意見である。昭和五十一年当時の新聞記事からの引用である。
 東海大学の杉山隆二教授は、プレートテクトニックスを否定している。したがって、遠州灘で海洋と陸地がぶつかりあって地震が起きるなどとは露ほども考えていない。遠州灘の地下では火成活動による熱エネルギーが蓄積されやすい条件がそろっており、そのエネルギーがまとめて放出されるときに、巨大地震が起こると考えている。駿河湾は地殻が薄く。熱エネルギーがつねに放出されているのて、大地震は起こらない、としている。
 プレートテクトニツクスは仮説である。この仮設をつかうと、大変うまく解釈できる場合もあるし、またうまくない場合もたくさんある。地震といえばプレートテクトニツクスにつなぐ信仰的研究者には大変困る。これは私の意見である。
「地震のはなし」浜野一彦 鹿島出版会より
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