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29.プレートテクトニクスを疑問視する人が多いのに何故教科書に載るのか
 ウェゲナーが大陸漂移説を発表したのは今から七〇余年前のことであるが、その当時の地質学者の反論は激しいものであった。文献で見る限りでは、この説は問題にはされていなかったようだし、気象学者が何を言うかの雰囲気でもあった。プレートテクトニツクスが唱えられ始めたのは、今から四十数年前のことであった。その結果、大陸漂移説が見直されることになった。
 それが今はどうだろう。プレートテクトニツクスでなければ、夜も日も明けぬ状態である。中学校の教科書にも、そのままとり入れられて、それは仮説でなくて、真理として扱われている。
 プレートテクトニツクス反対論先鋒のソ連のベロウソフも鳴りをひそめ、噂によると、肝心のベロウソフにもガタがきたとの話もある。真偽はともかくとしても、最近はプレートテクトニツクス一色で、すべての地質現象が解析されていることは確かである。
 まるで金科玉条、聖書の教えである。水平運動のプレートテクトニツクスに対して、垂直運動のブロックテクトニックスもあるのにと思わせられる。
 地震の発生機構を解析する上では、遠くはなれた海洋の中央で沸き上るプレートのエネルギーはあまり関係がなく、大陸周辺で起こる地盤の上下運動こそ問題の筈である。
「地震のはなし」   浜野一彦 鹿島出版会より
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