新・地震学セミナーからの学び
66 マントル熔融論の証明
現在定説では地球内部のマントルと呼ばれる物質は固体であると考えられています。それに基づいて解析される地球トモグラフィーが地球内部を観察出来るのだとされています。しかし、固体ではないとすれば、トモグラフィーによる知見を含めて、地震学は根本的に違っていることになります。

マントルが固体であるのかどうかを、地震波の波形から調べてみることにします。まず、地震が起きる場所と観測点の遠近によって以下のように地震を分類することにします。(参考[1356]、 [1553]

@近くで起きた浅い地震  A遠くで起きた浅い地震  B遠くで起きた深い地震

マントルが固体であるのなら三つの波には基本的に大きな違いは現れないはずです。

下図は@の地震で、よく見慣れたものです。初期微動(P波)に続いてS波が到達しているのが分かります。マントルが固体ならば、AでもBでも基本的には@と同じようになりますから、大きな違いはないはずです。しかし、実際にはAとBの波は下に紹介するように、@とは違っています。

@との違いも明白ですが、問題は、AとBの波に大きな違いがあることです。下の図は二つの海域で生じた浅発地震と深発地震との違いを比較するために、並べて表示したものです。上段はアメリカ国内での各観測点の波形を震央からの距離に応じて並べたものです。最大振幅で規格化されています。この図から以下のようなことが分かります

・浅発地震に見られる地震被害を起こす大きな震動が、深発地震には存在しない。

AとBの波がこのように明瞭に違っている理由は、石田理論で地殻と定義している部分の下部、すなわちアセノスフェアと呼ばれている部分は、固体ではなくて、熔融していることが原因であると考えられます。熔融物質の内部での爆発であるために、大きな震動が生まれないのだと思われます。ダイナマイトでも、堅固な岩盤内部でこそ効果的な爆破になりますが、軟弱地盤では爆破としては失敗に終わります。地球内部でも同じようなことが起きているのだと思われます。

堅固な地殻内部の爆発である浅発地震では、熔融部分との境界で地震波が反射するために、下図のように地殻内部を反射と屈折を繰り返して遠方にまで複雑に伝播しています。

ABの場合でも、図中にP、Sと表示したように、定説の理論で計算した時刻とほぼ同じ時刻に地震波が到達しているように見えていますが、これはマントルが粘弾性体であって、爆発的な震動に関しては弾性体のごとく振る舞っていることによります。しかし、ほんの一部のエネルギーを伝播させるだけで、大部分のエネルギーは地殻内部を反射と屈折を繰り返して、複雑に伝播していることを示しています。

 つまり、マントルは熔融している粘弾性体であるので、マントル内部へ進入する地震波はほんの一部分であり、大部分はマントルを伝播するのではない、ということが地震波の波形を調べることで証明されると考えられます。

また、浅発地震の震動が長い時間継続するのは、地殻の内部を反射と屈折を複雑に繰り返しているからであると考えられます。


マントル熔融論、S波の伝播問題、レオロジー等に関する最新の見解は [2339]、[2341]を参照してください。