新・地震学セミナーからの学び
60 国会におけるCO2地下圧入実験の審議
第168回国会 災害対策特別委員会 第3号

平成十九年十月三十一日(水曜日)

   午前十時開会

○風間直樹君 民主党・新緑風会・日本の風間直樹でございます。

 七月の参院選で初当選をさせていただきまして、この委員会が初質問になります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今日は先般起きました中越沖地震、それから三年前に起きました中越地震にかかわる質問をさせていただこうと考えております。

 まず、この場をおかりいたしまして、今回の中越沖地震で亡くなられた多くの方々に対して心からお悔やみを申し上げますとともに、今なお家屋の倒壊などで仮設住宅等不便な生活を強いられている皆様、多くいらっしゃいます。一刻も早くこうした皆様が元の生活に復帰できることを願っております。

 また、これまで全国各地から多くの皆様が新潟県に温かい御支援を賜りましたことに対しまして、心から感謝の念を申し上げたいと存じます。

 申し遅れましたが、私、新潟県の上越市というところに住んでおります。地震の被災地でございます。今回の中越沖地震、それから三年前の中越地震、それぞれで震度約六の地震に見舞われました。今日、この委員会には、同じ地元新潟から森委員、佐藤委員、そして塚田委員と三人の同僚委員に同席をいただいております。この七月の地震では、私と佐藤委員は全国比例の選挙区でございましたので県内にはおりませんでしたが、森委員と塚田委員は新潟県選挙区の選出でいらっしゃいますので、正に選挙中に被災をされたということになるわけでございます。

 そこで、まず大臣にお伺いをしたいと思いますが、今回、この委員会が中越沖地震以降、参議院の場で初めてこの地震に関する質疑が行われる場というふうに伺っております。この中越沖地震の復興に関して大臣がどういう認識と姿勢で臨まれるか、そのお考えをまずお伺いしたいと思います。

○国務大臣(泉信也君) 今回の地震は、三年前の新潟県中越地震と大変近接した震源域で発生したということでございまして、家屋の倒壊などが非常に多かった、二度の災害を受けた方もいらっしゃる、しかも高齢者が被災をしておられるということで、長期間の避難所生活を強いられておられるということが一つの大きな特徴であったと思いますし、またガス、電気のライフラインが復旧までに二十日間掛かった、信越線に代表されます交通網の復旧も時間が掛かった、結果として地方都市圏の生活や生産基盤に深刻な影響を与えたというのが一つの大きな特徴ではないかと思っております。

 また、今回の地震では、地震の特徴として柏崎刈羽原子力発電所が被災を受けた、このことによっていわゆる観光のお客様が風評被害によって激減をした、地域経済へ大きな影響を与えたという意味は大変特色的なことではなかったかと思います。したがって、原子力発電所の安全対策や防災体制の在り方などがこの地震で改めて問われたということが特色の一つであります。

 また、自動車部品工場の被災によって日本じゅうの自動車産業が、あるいは海外も含めてと言った方が正確かもしれませんが、大変大きな生産の一時ストップというような状況に追い込まれた。いわゆる事業継続計画というBCPの重要性が改めて認識された災害であったというようなことが挙げられると思います。

 政府としては、発災以来、関係機関と連携を取りまして各般の災害応急対策や復旧復興の対策に取り組んできたところでございますが、これらの今回の地震により得られました課題や教訓を踏まえまして、例えば先ほど申し上げました原子力発電所等につきましても、新たな知見が得られれば全国五十五基の原子力発電所の安全性についての検討もするということなどを踏まえまして、災害時の要援護者対策強化など、必要な対策を講じて災害への備えを更に確かなものにしていきたい、このように考えておるところでございます。

○風間直樹君 三年前の中越地震の際には、私は直接地震を経験いたしました。そのときに私が持ちました率直な疑問が一つございまして、当時被災された多くの方が異口同音におっしゃいますが、普通の地震とはちょっと違う。といいますのは、地下から突き上げられるような強い衝動、これが中越地震で起きた、我々が感じた揺れでございまして、一般に地震といいますと横揺れをイメージするわけでございますが、正に震源地では地下からの強い突き上げを経験したわけでございます。

 今日、私がこの委員会で指摘をし質疑をさせていただきたいポイントは、実は私どもこれまで地震の原因というのは、いわゆるプレートが移動することによってもたらされる、そこから起きる、これが地震だというイメージを持っているんですが、どうもそれ以外にも地震の原因になる力学があるんではないかと。特に、実は新潟県内でここ数年間、経産省が補助金を出している財団法人が、CO2、二酸化炭素の地下への貯留実験というものを行っております。同時に、新潟県内に幅広く展開をしている帝国石油、この会社が地中への水の注入を二〇〇〇年ごろから行っております。この二つの行為が、もしかしたら中越地震あるいは中越沖地震を招いた原因になっている可能性があるのではないかという、このことについて今日は質疑をさせていただきたいと、このように思います。

 委員の皆様にはお手元にお配りしました資料をごらんいただきたいと思いますが、最初の資料の一―一、こちら、今私が申し上げましたいわゆるプレートテクトニクス理論と言われる、ふだん我々が持っている地震が発生するイメージでございます。

 今私が指摘をしました、どうも新しい原理によって起きているのではないかといいますのが、この資料の一―二でございます。ここに化学式を書いております。私もどちらかというと文系なものでございまして、余りこういったものには造詣が深くないんですが、調べてみますと、このFe+H2O、Feというのは鉄でございます。H2Oは御承知のとおり水でございます。これが触れるとH、つまり水素を発生させる、こういう原理がございます。

 これはどういうことかといいますと、地中に水を注入し、そこで地中にあった鉄ないし鉱分と水が接触した結果、水素が発生すると。これは化学的な原理として当然なわけでありますが、この発生した水素が地中深くで滞留をすることによって水素原子が自身で核融合を起こして、それが地下爆発につながっているのではないかという、これが最近唱えられている新たな地震の理論でございます。

 これ簡単にどういうことかと申しますと、今日こちらにホッカイロを持ってきたんですが、この原理と同じでございます。このホッカイロを今私が封を開けて取り出しますと、空気中に含まれている水分とこのホッカイロの中の鉄分が反応して熱を生じます。これがこの化学式の意味するところでございます。

 さて、そうすると一つの疑問が浮かぶんですが、一般論として、先ほど新潟県内でこういった行為が行われていますということに触れましたが、事業者の方々が天然ガスや石油を増産するためにガス田や油田に水を注入する、こういうことがよくあるわけですが、これはどういう理由で行っていらっしゃるのか、そのことをちょっと御説明いただければと思います。

○政府参考人(北川慎介君) 御説明申し上げます。

 油田あるいはガス田への水の注入、これは石油、天然ガスの回収率の増進を図る、このために行われてございまして、幾つかの方法がございます。

 まず、地下に存在する原油は岩石に粘り強く粘着しておる場合がございまして、そのままでは完全な回収が難しいことから、水やガスあるいは水蒸気を加えることによりまして原油の粘り気を下げたり、あるいは油層内の圧力を上げて井戸に押し上げるということによりまして回収率の増進を図る石油増進回収法というものがございます。

 また、地中の石油あるいはガスを含んだ岩石、これに水を圧入いたしまして人工的な割れ目を作りまして、その割れ目の中に砂などを充てんいたします。この砂と砂との間の微細なすき間から石油、天然ガスが通りやすくなって出てくる、こういった方法がございまして、これを水圧破砕法と呼んでございます。

 このような生産方法は広く一般的に行われているところでございます。

○風間直樹君 ありがとうございました。

 今の御説明、要約しますと、一種の潤滑剤として水を地中に注入することによって石油の取り出しを容易にしたり、あるいは天然ガスの取り出しを容易にすると、こういうことかと思います。

 実は、これは世界各国で広く行われている手法だというふうに伺っておりますが、この手法が地震を誘発するということにつきましては、特にアメリカにおきまして既に相当の広い認識を得ているところでございます。

 今日は手元に一つの資料を持ってまいりましたが、こちら、アメリカのオハイオ州の州都コロンバスというところにありますバッテル研究所、この研究所がまとめた資料であります。この資料の題名は、帯水層へのCO2注入が誘発する地震活動の調査、こういう名前になっております。つまり、地中に水ないしCO2を注入したときにどのような形で地震活動が誘発するかということを報告しています。

 皆様のお手元には資料としてお配りをしておりますが、資料の二―一、そして二―二。この二―一がバッテル研究所の報告書の末尾に添付されている表です。この二―一と二―二はほぼ同じものでございますのでごらんいただきたいと思いますが、ごらんのとおり、例えば一番上のコロラド州のデンバーで行われた廃液処理のための地中注入、深さ三千六百七十一メートルのところに注入をしました、注入時の圧力は七・六メガパスカルでした、それによって誘発された地震のマグニチュードが五・五だったということが記されております。さらにその下、日本語の表の三番目でございますが、同じコロラド州のラングレーというところ、石油回収を目的にCO2を注入したところ、深さ千九百メートルのところに注入し、その圧力は八・三メガパスカルだった、これが誘発した地震が三・一のマグニチュードだったということでございます。

 同じような例は日本でも報告されておりまして、昭和四十年の八月から松代市で約五年間にわたって群発地震が起きました。実はこのときには、調査研究という目的で、ちょうどこの地震が起きた期間に水を地中に注入していたわけでございます。もちろんこの地震との因果関係は当時は知られておりません。この水を注入している間、深さ千八百メートルのところに五メガパスカルで注入していたわけでございますが、二・八のマグニチュードの地震が誘発されたと。これは、地中への注水実験をやめると地震が止まるという因果関係が当時報告をされております。

 このように見てまいりますと、地中に水ないしCO2を注入することが、我々はそういう意識は全くないわけですけれども、実は地震を誘発していたということがこれまでの経験則から浮かび上がってまいります。

 この手元にありますバッテル研究所の報告書の中には、廃液処理その他の目的でCO2や水を注入した結果、地震が起きました、同時に、その注入の影響地域というものが数キロから数十キロ先にも及んだ、さらに、深さもこの注入した井戸のポイントから数キロ深いところまで及んでいると、こういう報告がこの中でなされております。

 また、アメリカでは、こういった水やCO2の注入が行われることによって頻繁に地震が起きている、それまで地震がなかった地域においてさえ群発地震が発生した、そういう結果を踏まえて、連邦政府が研究機関に依頼して影響評価の報告を行わせて、その結果、こうした行為を行う事業者が遵守すべき法令を定めております。これは地下圧入規制プログラムと呼ばれる法令でありますが、英語ではアンダーグラウンド・インジェクション・コントロール・プログラムと、こういう名称で呼ばれております。

 さらに、ここから一歩論を進めますが、このような原理、つまり地中に水ないしCO2を注入したときに地震が起きる、これを発展させますと、大きな水の注入につながる建設物、例えばダムがそうでありますが、このようなダムを造った場合に地震発生が伴うという、こういう報告が同じく米国内でなされております。それが皆様のお手元にお配りしております資料二―三であります。アメリカ、ギリシャ、インド、フランス、ローデシア、それぞれの地区で建設されたダムによってどの程度のマグニチュードの地震が起きたか、ここに表記をされております。

 アメリカの地質調査所という研究機関、ここが連邦政府の要請によりまして九六年にある報告書を作成いたしました。アメリカ国内である大きなダムを造るという計画が持ち上がった。そのときに地域住民の皆さんから、ダムを造られるとその後地震が発生するおそれがあるから十分な調査をしてほしいという声が出たために、連邦政府が調査を依頼したわけであります。

 この地質調査所のまとめた結論は三つございます。まず一つ、貯水による誘発地震を考慮する必要がある。二つ目に、自然に起きる最大の地震よりも大きな地震を誘発することはないだろう、ダム建設によって。さらに、しかしその地域で自然に起きる最大規模の地震の発生の可能性は高くなるかもしれない、つまり、ダムを造ることによって地震が起きるかもしれないと。加えてもう一点、もしダムを建設するなら、ダム着工前に地震計を多数配置して基礎データを集める必要があると、こういう結論でございます。

 ここまで、まず私が今申し述べましたことをまとめさせていただきますと、このように地中に水やCO2を注入することにより地震が発生するということになるわけでありますが、この地震の大きさ、様々な科学者の研究によりますと三つの要因によって規定されるということが大体分かっているようでございます。まず一番目に、地下への水の浸透度合い。二つ目に、地下に埋設されている、存在する金属の量。そして三番目に、原子状の水素ガス、水分と鉄その他の鉱石との反応によって発生したこの水素のガスが貯蔵されるのに適した地域、つまり地盤がそこにあるかどうか。この三つの要因が地震の大きさを決定すると、このようなことが言われております。

 そこで、お尋ねをいたします。

 財団法人地球環境産業技術研究機構が経産省の補助金を受けて新潟県内で二〇〇三年七月から二〇〇五年一月までに行ったCO2地中貯留実験について、それぞれの実験実施の年月日、場所、注入総量、注入圧力をお尋ねしたいと思います。また、実験を行った目的もお尋ねいたします。同時に、経産省から幾らの補助金が支給されているか、併せてお尋ねいたします。

○政府参考人(伊藤元君) お答え申し上げます。

 経済産業省は、我が国における二酸化炭素回収・貯留、これは若干御説明させていただきますと、我が国及び世界が直面をしている喫緊の課題でございます地球温暖化対策という中で、CO2の排出量を削減をするというのが当然第一の対応でございますが、それでは処理をできないCO2というものを安全に地中に隔離することによってこの地球温暖化問題に対応しようというものでございます。これにつきましては、いわゆるIPCCという世界の科学者が集結した会合があるわけでございますが、この場でも大変有望な地球温暖化対策ということで位置付けられておりまして、実施及び先行的な研究が欧米を始め各国で精力的に進められているというものでございます。

 今申しました二酸化炭素回収・貯留の二〇一五年ごろの本格適用を目指しまして、財団法人地球環境産業技術研究機構、RITE等を通じて二酸化炭素地中貯留技術研究開発事業を実施しております。その一環といたしまして、新潟県長岡市深沢町にあります南長岡ガス田岩野原基地におきまして、二酸化炭素を実際に地下約一千メートルの帯水層に注入する実証実験を行いました。

 この試験は二酸化炭素の圧入を適切に行うため、圧力と量を安全に管理する技術開発等を行うことを目的にしております。そして、地下に貯留された二酸化炭素の動向を観察し、長期的な挙動シミュレーションを行うことを目的にしております。ちなみに、正にこの注入をしているときに新潟で地震が起こったわけでございますが、その後詳細な調査をしたところ、注入した二酸化炭素というのは数百メートルの範囲内にとどまっていたということも確認されております。

 本実証実験で実際に二酸化炭素の地中への圧入を行った期間は、二〇〇三年七月七日から二〇〇五年一月十一日までの間でございます。当然、安全性が重要でございますから徐々に量を増やしていくということで、詳細にわたりますが、二〇〇三年七月の七日、それから二〇〇三年八月の十二日から翌年三月九日、二〇〇四年四月三十日から七月六日、二〇〇四年八月十二日から十月二十三日、それから二〇〇四年十二月六日から翌年二〇〇五年一月十一日に分けまして注入をしたわけでございます。二〇〇五年一月にこの二酸化炭素の圧入が終了した後も、現在に至るまで地中の二酸化炭素の状況のモニタリングを続けておりますが、異常は発生をしていないというふうに承知しております。

 それから、二酸化炭素への地中の圧力でございますが、元々注入している部分というのは約一千百メートルでございますので元々の気圧が約百十キロあるわけでございますが、そこに圧入の圧力といたしましては約百二十気圧ということで注入をいたしまして、詳細の量でございますが、約一万四百トンの注入を行いました。

 それで、資金面でございますけれども、新潟県における実証実験はRITEが行っております二酸化炭素地中貯留技術研究開発の一部として実施しております。RITEが新潟県での実証実験にかかわっているのは二〇〇〇年度からでございまして、この二〇〇〇年度から二〇〇六年度までの間に本実証実験に要した額は約二十六億円ということになっております。

 先ほど先生から御指摘ございましたとおり、多くの地質学者は地震の原因というものがもっとはるかに深い地下で起こっておりますプレートの作用によって行われるというふうに認識されていると承知しております。様々な今後その学術的な知見も勘案しながら、かつ、その因果関係というのをしっかり確認をしながら、安全性に十分配慮しながら、この実証実験というのを続けていきたいというふうに考えております。

○風間直樹君 今の御答弁の中で、ちょっと数字の確認をさせていただきたいと思いますが、補助金の額は二十六億円ということでよろしいでしょうか。

○政府参考人(伊藤元君) この実証実験に直接使いましたお金は二十六億円でございます。

○風間直樹君 併せてお尋ねをいたしますが、この注入をした箇所の地盤特性について御説明をいただければと思います。

○政府参考人(伊藤元君) ただいま申し上げました実証実験、新潟における二酸化炭素の地中貯留試験でございますけれども、実際に二酸化炭素を圧入した箇所は地下約一千メートルに位置いたします砂岩で構成をされた帯水層でございます。

○風間直樹君 続いて、この帝国石油による水の注入についてお尋ねをいたしますが、二〇〇〇年ごろからこれが行われているというふうに聞いておりますけれども、各注入の実施日、それから注入総量、場所、並びに注入箇所の中越地震それから中越沖地震の震源地からの距離をお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(北川慎介君) 御説明申し上げます。

 帝国石油におきましては、南長岡ガス田におきまして、先ほど申し上げました水圧破砕法による生産を行ってございます。帝国石油によりますれば、水の注入は新潟県長岡市親沢町のほぼ同一箇所にある二本の井戸によりまして、二〇〇一年七月に四日間、同年八月に二日間、また二〇〇六年十月に四日間、同年十一月に三日間実施されておりまして、総注入量としては約四千三百キロリットルの注入が行われてございます。

 また、当該井戸の位置といたしましては、中越地震及び中越沖地震の震源地より、それぞれ約十五キロメートル及び約二十三キロメートルの位置にございます。

○風間直樹君 済みません。ちょっと御答弁が聞き取りにくかったんですが、実施の年月日についてもう一度教えていただけますでしょうか。

○政府参考人(北川慎介君) それぞれの年月日でございます。二〇〇一年は七月十二日、二十日、二十五日、三十一日の四日間、八月は五日及び十日の二日間でございます。それから、二〇〇六年でございます。これは十月十六日、十九日、二十五日、二十八日の四日間、十一月は四日、十四日、二十日の三日間でございます。

○風間直樹君 ありがとうございます。

 この委員会においては初めて、恐らく新潟県民の皆様にも、この特に帝国石油の水の注入が行われた、しかも二〇〇一年、二〇〇六年と地震に近接した年月日に行われているという事実が分かったということだろうと思います。

 委員の皆様のお手元に配付させていただいた資料の三―一と三―二をごらんいただきたいと思いますが、これはこの財団法人が行ったCO2の地中貯留の図と写真でございます。

 まず、三―一の図でありますが、大体行ったことを図で示すとこういう形になっている。今御答弁をいただきましたように、このCO2を貯留したそのすぐ下には砂状、砂岩の帯水層があるという御答弁でございました。

 御答弁にありましたように、CO2を注入したからといって水を注入したわけではないから、それが地震に影響しているということはちょっと考えられないというのが一般的なこれまでの考えだと思うんですが、この十九メガパスカルという圧力でCO2を入れたときに、この下にある水分、帯水層の中の水が恐らく移動するだろうと。その移動した水がその移動先で鉄ないし鉱分と接触をし水素ガスの発生を生んでいるのではないかと、こういうことなわけであります。その下にある写真が、今御答弁にありました長岡市内の岩野原のこの財団法人の実証試験サイトの写真ということになります。

 私は、この帝国石油の実験も、延べ日数にしますと二〇〇一年は六日間、それから二〇〇六年はやはり同じく六日間、合計で四千三百キロリットルの水が注入されたと、こういうことでございますが、地震、中越地震と中越沖地震の震源地からそれぞれ二〇〇一年の実験は十五キロ、二〇〇六年の実験は二十三キロと、極めて近いことが大変気になります。

 皆様には資料の四、ちょうどページ数で四ページ目になりますが、四をごらんいただきたいんですが、二つの図を掲載しております。まず、上の図はこの財団法人地球環境産業技術研究機構がホームページに掲載している図でございまして、この岩野原サイト、地中貯留を行った場所と、それから中越地震の震源地の相関関係が示されております。その下の図、この上の図に中越沖地震の震源地を加えた図でありますが、これを加えてみますと一目瞭然のように、実はCO2の地中貯留の地点を中心にして二つの地震の震源地がちょうど二十キロ、二十キロという直線上に並ぶことが分かります。この因果関係をどう考えるかということが実は大変重要なのではないかと私は思います。

 次のページ、資料をごらんいただきたいんですが、資料の五―一と五―二でございます。この五―一と五―二は、財団法人によるCO2の地中貯留実験が始まって以降、新潟県内、中越ですね、地震が起きた中越地域でどの程度の地震が発生したかを示しています。まず五―一をごらんいただきたいと思いますが、実験が開始されましたのが、財団法人による実験、二〇〇三年の五月です。その一年後、二〇〇四年に五件の地震が注入井戸から半径二十キロ以内で起きていることが分かります。

 さらに、その下の図をごらんいただきますと、幾つかの丸印が記されておりますが、薄い丸はこの注入実験を始める前に起きた地震、黒い丸は注入実験開始以降に起きた地震です。まず、皆様にはこの図のちょうど円形の下の部分、〇四年一月九日に二つの地震が起きていることを御確認いただきたいと思います。その後、少し左に参りまして、〇四年の七月五日に二番目の地震、そして反対右側に飛びまして、〇四年の九月七日に三番目の地震、そして翌日、九月八日に四番目の地震が注入以降半径二十キロ以内で起きていることが確認されております。

 冒頭、私が三年前の中越地震で体験した話を申し上げましたが、正に地中から突き上げる動きでした。非常に近い、体感としては、地中で爆発が起きているといった印象でありました。それを示す資料が資料の六―一と六―二でございます。

 六―一はちょっと見にくくて恐縮なんですが、これは中越地震の震源地となりました小千谷、守門、この地域の地盤が地震の瞬間にどう隆起したかという図でございます。特に、この守門地区の地盤の隆起が非常に著しいことがごらんいただけるかと思います。あわせて、その下の図、この震源地の川口町、この川口町の地盤が地震の瞬間何センチ上に移動し、その直後どれだけ下がったか。まず二十二センチ上に移動し、そしてその後、三十五センチ下に沈下しております。相当強い衝撃が正に真下から来たということが読み取っていただけるのではないかと思います。

 ここまでるる今回のこの新潟県内における二つの地震についての原因、これがどうもCO2と水の注入にかかわりがあるのではないかということを指摘させていただきましたが、ここまでの内容について、泉防災大臣、そして、今日お忙しいところをお越しいただきました山本香苗経産省政務官、どのような御感想と御認識をお持ちになったか、お尋ねをいたします。

○国務大臣(泉信也君) 先生の大変学問的な説を初めて実は伺った次第でございまして、お話を承る中で、因果関係がこういう現象面を通して必ずしも否定できないのかなと、そう率直に思いました。

 ただし、今これで、先生御自身も思っておられると思います、決め付けることはできない。こうした事態が二十キロ以内で発生をしておる、しかも注入時期と相関をしておると、こんな分析結果が国内そしてアメリカでもなされておるという事態は、これから注意深く見守って更に検討をする、研究をする必要があると、大変貴重な御指摘をいただいたと受け止めさせていただきました。

 ありがとうございました。

○大臣政務官(山本香苗君) 今るると御説明をいただきましたけれども、今御主張されましたことにつきましては、一部の雑誌等々で主張がなされていることは存じ上げております。

 それで、先ほど事務方の方からも御説明をさせていただきましたけれども、この地震発生のメカニズム等、いわゆる二酸化炭素の地中貯留との因果関係、今大臣からもお話ありましたけれども、直ちに確認するという手段はありませんけれど、海外におけるいわゆる年間百万トンベースで二酸化炭素の地中貯留事業が実施されているということも御存じであると思います。ノルウェーだとかカナダとか、そういった国々ではもう既にやられておりまして、地震を誘発しているという情報は今のところないわけなんです。

 いずれにせよ、今、この二酸化炭素回収・貯留技術というものは、先ほどの地球温暖化対策を推進するために欠くことができない技術であると思いますが、その実用化に向けましては、今御指摘をいただきました点も含めまして、いわゆる技術安全性をしっかり確保しなくちゃいけないと。それは、実証試験の実施に先立ってきちっと安全性評価及び環境影響評価等を確実に実施してまいりたいと思っておりますので、御理解のほどよろしくお願い申し上げます。

○風間直樹君 今、泉大臣と山本政務官から御答弁いただいたとおり、まだこれは科学的に確認された説ではございません、仮説でございます。

 さらに、世界じゅうでこうした実験が行われているわけでありますが、すべての実験場所で地震が起きたということが報告されているわけではございませんでして、先ほど申し上げましたとおり、この地震の大きさというものが、先ほど述べました三つの要件によって決まる、その条件を満たしているか満たしていないか、その地域特性というものがあるのだろうと私も考えております。

 そこでお尋ねをしたいんですが、去る十月の三日に少々気になる発表がなされました。経産省がこの財団法人が行ってきた実験を基にしまして今後更に大規模な実験の開始を決定したという発表をされたわけでございますが、このCO2の貯留実験、更に大規模にいつから開始をされるのか、その場所はどこか、そして量はどれぐらいを予定されているのか、お尋ねをしたいと思います。

○政府参考人(伊藤元君) CCSの推進につきましては、経済産業省といたしまして、技術的側面、安全的な側面を慎重に検討する観点からCCSの研究会というものを設けまして、そこで専門家の皆様方に議論をしていただきました。その結果が報道された内容でございまして、今般の一万トン規模の正に実証実験の成果からして、やはり更に安全性を十分配慮した上でより大きな規模で実証実験をしていく段階ではないかという御提言をいただいたところでございます。

 こうした御提言を踏まえまして、経済産業省といたしましては、平成二十年度の予算において、こうしたより大きな規模の実証実験、十万トン規模を念頭に置いておりますけれども、についての予備調査を始めたいということで予算要求をしているところでございます。

 ただ、場所につきましては、先ほど御答弁させていただきましたとおり、正に場所の選定等に当たってはしっかりと安全性とかいろいろな科学的な裏付けというのが必要でございますので、現時点で特定の場所を選定をしているということではございません。今後、予算を付けていただいた上で、予備的な調査結果を踏まえまして具体的な調査内容について詰めていきたいというふうに考えております。

○風間直樹君 長岡市でこの実験をまた予定されていると、新聞記事にはそう報道されておりますが、長岡近辺ではこれまで帝国石油さんが石油あるいは天然ガスの採掘をずっとされてきて相当その地盤の大体詳細が分かっていらっしゃると。それがこの地区で経産省さんがこういった実験をされる一つの理由になっているというふうに伺っているところでございます。

 ところが、今日私がこの質問をしましたもう一つの意図は、泉大臣が冒頭にもおっしゃいましたように、正に刈羽原発を抱えている地域だということがあるわけなんです。今回の中越沖地震で正に刈羽原発が直撃を受けたわけでございますが、もしも今後この経産省が補助金を支給する財団がCO2の地中処理を更に進めて、そして仮にもう一度新潟県内で大規模な地震が起きた場合、私は、刈羽原発の安全性もそうですし、原発の存在自体が恐らく非常に難しくなるだろうというふうに考えております。

 資料の九をごらんいただきたいと思います。これは新潟日報でございますが、新潟の泉田県知事が、この中越沖地震で刈羽原発が被害を受けたことを受けて、今後の原発の調査結果によっては刈羽原発の廃炉もあり得ると明言をされております。新潟県に確認をしましたところ、十分な安全性が確認されることなしには絶対に運転を再開させないんだと、それを県から東電にも申し入れているところなんだと、こういう話を聞いたところでございます。

 私、今回、この問題を調べておりまして一つ大変驚いた事実が出てきたんですが、お手元の資料の八をごらんください。この財団法人の地中貯留実験、その財団法人の役員名簿を付させていただきましたが、この理事の中に東電の勝俣社長のお名前がございます。つまり、地震の一つの原因になっていると今回私が指摘をした、その可能性があると指摘をしたこの地中貯留の実施主体、財団法人の理事に東電の社長が名前を入れていらっしゃる。これは、今御紹介しました新潟県の姿勢も考え合わせますと、非常に憂慮すべき事実ではないかと私は感じます。万が一、今後また新潟県内で同規模の地震が起きて、そして原発が被害を受けた場合、その場合の責任をだれが負うのかということも恐らく私は論議になるだろうと考えております。

 そこで、経産省には、この財団法人が行っております実験の、まず実験について地震との因果関係の調査をしていただきたい、このことを要請いたします。そしてもう一つ、この因果関係の究明までの間、現在行われている、あるいはこれからまた再開されようとしている実験はいったん中止をしていただきたい、このことを要請したいと思いますが、お考えを伺います。

○政府参考人(伊藤元君) 御質問にお答えする前に、理事についての御指摘がございますので一言申し上げますと、いわゆるRITEへの役員、特に理事につきましては、個人的に有していらっしゃる知識、経験、能力等を踏まえて、適材適所の観点から御参加いただいているというふうに承知をしております。

 それから、今の御質問の件につきましては、先ほども先生御指摘のとおり、地震の因果関係という点については、現在の地質学の大勢の議論としては、その因果関係ということについては十分な論拠がないというのが一つの大きな通説ではないかというふうに認識しておりますけれども、そうした全体的な地質学の動向等も踏まえながら、今後のその実証実験の進め方については検討をしていきたいというふうに考えております。

○風間直樹君 最後に委員長にお願い申し上げます。

 今日申し上げましたこの実験と因果関係の究明のために、参考人招致を要請いたします。

 地球環境産業技術研究機構の常勤理事、帝国石油のこの問題の担当副社長、そして静岡理工科大学非常勤講師の山本寛氏の参考人招致を求めます。

○委員長(一川保夫君) 後刻理事会で協議いたします。

○風間直樹君 以上、終わらせていただきます。