新・地震学セミナーからの学び
22 ANS体制における地震予知の仕組み
ANS体制における地震予知の仕組みを説明いたします。図ー1は各地に散らばった観測報告者の所在位置と報告内容の識別を示したものです。赤色が方位磁石に異常があったという報告です。緑色は異常なしの報告を意味します。報告無しは薄緑で表示します。赤点の広がりが大きくなるほど地震の規模が大きいことを意味するのですが、その理由を説明します。

図ー2は産業技術総合研究所榛原地下水位観測所における、地震検知と地震規模との関係を示したものです。M8地震ですと1000km先の地震をも検知できるようです。この関係式は地震規模Mと震央までの距離Lとの間に次の関係があります。

図ー1 観測報告者所在位置と報告内容の識別
図ー2 榛原観測所における地下水位による地震の検知と地震規模との関係、ANSの地震検知限界は水位観測よりも感度が鈍いと思われる(セミナー280参照)
M=2.4logL+0.8

しかし、コンパスによる観測というANS体制の感度は都合の良いことにもっと感度が悪そうです。感度を上げて、小さな地震まで検知しようとするから、かえって「木を見て、森を観ず」の観があります。大地震こそ直前予知しなければいけないのですから、感度は悪いくらいが丁度良いのです。

仙台のANS観測員の報告(セミナー231)では130km先のM6.2地震をコンパスは検知しなかったということですから、ANSの検知限界として、M=6.2の場合L=100kmであるという条件を入れると、図に示すようにANSの検知限界は次のような関係式になります。


M=2.4logL+1.4

(注)仙台の観測員による観測は電磁波メーター4080型によるものでした。コンパス観測の感度は現在のところ不明です。ANSの検知限界は今後の課題です。コンパス方式のANSの検知限界は現在のところ一応の目安と思ってください。(02,12,30)
東海沖90km(深さ40km)のM5.1地震(03,1,19)を新居町で検知したようです。思っていたよりも感度が良いのかも知れません。(03,2,2)

この関係式を使って、地震の前兆から、発震までを段階を追って推定してみます。図ー3はM4.7地震の水位変動記録です。

第一段階:震源付近にまず、赤点(異常ありという報告のこと)が発生します。震源が海域の場合には、少し遅れて一番近い陸域に赤点が現れます。

第二段階:赤点の範囲が地震規模に応じて広がっていきます。最大に広がって、止まった時が解離反応が終わった時です。

図ー3地震発生前後の地下水位の変動、コンパスの異常観測もこれに近い変化を示すはず。上の線は、実際の水位変動で、下の線が、気圧等の影響を差し引いて得られた修正値です。地震発生直前に少しあがるようです。

この時の広がりの直径(2L)から地震規模が判定できます。(図ー4参照)たとえば、直径20kmならば、M3.8でそれほど心配はいりません。直径200kmであれば、M6.2です。東海地震で想定されているM8巨大地震ならば、直径1120km 、 M7地震で、直径420kmといった具合です。地震規模に応じて、広がりが停止するまでの時間も長くなるでしょう。数値は今後の観測データの蓄積で変更されます。

第三段階:解離が終了すると、赤点がしだいに減っていきます。この間に降下していたマグマ溜り周辺の温度が再び上昇していきますが、この赤点の広がりが減少に向かっているどこかの時点で、爆鳴気に着火して地震の発生につながるでしょう。あるいは、全て消滅してからかもしれません。

第四段階:地震の発生が無ければ、解離ガスが地上に漏出して、異臭騒ぎを起こしている場合、または解離反応の速度が緩慢であったために、自然順応速度内に収まって、爆鳴気爆発に至らなかった場合などが考えられます。地震発生があれば、その環境における解離度に落ち着くまで、次の余震に向けて、同様の解離反応プロセスが、繰り返されるでしょう。

震源位置の予測

震源は勿論赤点が描く円の中心部です。観測点が蜜に配置してあれば、震源が海域にあってもある程度の位置予測は可能です。

発生日時の予測

図ー4は上の述べた地震規模の推定を説明するための模式図です。地震の発生は水位記録のように、地震発生即水位低下という変化ではないと思われます。それは、解離反応の終息後、温度が回復して爆鳴気に着火するまでに時間がかかるからです。

図ー4 地震規模と地震発生日推定のための模式図 異常報告範囲の直径(2L)の広がりから地震規模が分かり、広がりが減少する時期が地震発生警戒日である。
地震の発生は赤点の消滅が始まってから、消滅するまでと、消滅してから数日の間でしょう。これくらいの警戒日数ならば、「明日起こっても不思議ではない」と毎日言われながら暮らすよりはましです。コンパスの変移角度の数値情報があれば、その数値からコンターラインを引いて、震源予測に役立てることも可能です。

震度、被害の予測

震度、被害予測はコンパス観測だけでは不可能です。震源の深さ、解離爆発の方向によって大きく変わりますので、赤点がかなり広がる気配を見せた時に、電磁波メーターで集中観測する必要があります。爆発の方向が地表に垂直な海域地震の場合には津波の発生があります。

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