新・地震学セミナーからの学び

69 風間直樹議員の国会質問

第169回国会 決算委員会 第6号

平成二十年五月十二日(月曜日)

○風間直樹君 今日は甘利経産大臣と初顔合わせさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 経産省が行っております実験と、それから地震発生の相関関係について今日はお尋ねをさせていただきます。

 まず、事実の確認をいたします。

 経産省は、現在、二酸化炭素の地中貯留実験、これは英語でカーボンダイオキサイド・キャプチャー・アンド・ストレージと、こういうふうに呼ばれていますので、略称CCSと言われておりますから、この後CCSと言わせていただきますが、このCCS実験を過去五年間、新潟県の長岡市内で行われました。正確には二〇〇三年の七月七日から二〇〇七年の一月十一日まで、長岡市にあります帝国石油の南長岡鉱山、ここはガス田でありますが、この岩野原基地と呼ばれる場所で、地下千百メートルの帯水層と言われる水分を含んだ砂岩層に約一万四百トンのCO2を五年間で注入したと、こういうことでございます。

 もう一方の事実でありますが、二〇〇四年の十月二十三日、中越地震が起きました。そしてまた、二〇〇七年の七月十六日、今度は中越沖地震が発生しました。両方とも相当の震度であったわけでございます。

 まず、皆様には、お手元に配付しました資料の二ページ目を御覧いただきたいと思いますが、二ページ目の下の段に、この岩野原基地で経産省が行った委託実験ですが、このイメージ図、概念図を載せております。千百メートルの地下深度に最大圧力十九メガパスカル、これは非常に高圧なんですね、でCO2を注入すると。この注入をする上の部分には不透水層と言われる層がありますが、これは水分等を通さないと思われる岩盤のようなキャップロックであります。これはCO2の排出抑制、地球温暖化抑制のために排出抑制をする、そのための一環として世界的に注目されている技術、これがCCSでありまして、その実証実験を経産省は新潟県の長岡市内で過去五年やったと、こういうことです。

 この帯水層と呼ばれる層にCO2を注入する理由ですが、要は、非常に高圧で一定の温度を気体ないし液体に対して掛けますと気体だか液体だか分からないような状態になる、これを超臨界と言っているそうでありまして、この超臨界状態になった炭酸ガス、CO2を水を含んだ地層に目掛けて注入すると。そこの水分にCO2を吸収させることによって地下に閉じ込めると。簡単に言うとこういうことであります。

 私も新潟県の住民でございますが、当時はこの地震を、私もまず中越地震は地元で体験いたしました。大変な揺れでした。中越沖地震の際には我々ちょうど選挙中でございまして、私も新潟県にはいなかったんですが、大変な被害を被ったわけであります。しかし、まさかその経産省のやっている委託実験がこれと何らかのかかわりがあるだろうという可能性には当然考えが及ばなかったわけです。

 一方、これまで日本を含む世界各地で研究された様々な実例を紹介をさせていただきます。

 お手元の配付資料のまずは三ページ目を御覧いただきたいんですが、アメリカのオハイオ州というところにバッテル研究所というところがございます。この研究所がアメリカのエネルギー省から委託、補助金を受けて研究を行っています。すなわち、水を地中に注入した場合、地震を誘発する可能性について調べてくださいと、それを受けて行った調査なんですが、そこに結論がございます。

 地層を選べばCO2地中貯留は可能であろうと。ただし、過去に地震が起きたところでは、地震が起きる、誘発する可能性は極めて高い。特に、超臨界の液体炭酸ガス、CO2ですね、これを注入する場合、中越のような場合、地震を誘発するかもしれないと。こういう報告書をまとめているわけであります。

 同時に、その下にあります英文の表ですが、これは、米国内で何らかの液体、水ですとかあるいは廃液、こういったものを地中に埋めた場合に地震が起こったという記録が存在するもののリストです。一番左にありますのが地名と州名。それからその右側にタイプとありますのが、どういった目的で何を入れたか。その右側が、地下、深さ何メートルの場所に入れたか。そして、その右側が、MPaとありますが、これはどれだけの高圧メガパスカルでその液体を注入したか。そして、一番右側がこれによって誘発された地震のマグニチュード。こういった表であります。

 つまり、米国におきましては、既に相当の認識で水を注入した場合に地震を誘発する可能性がある、リスクがあると、こういう認識が持たれているわけであります。

 続いて、日本ではどうかといいますと、配付資料の四ページ目、最後のページでありますが、二〇〇二年、地学雑誌でありますジャーナル・オブ・ジオグラフィーというものに日本の研究者による報告が載っております。これは極めて注目するべき論文だと思いますので研究者のお名前を読み上げさせていただきますが、まず京大防災研究所地震予知研究センターの西上欽也さん、水野高志さん、加納靖之さん、名古屋大学大学院理学研究科地震火山観測研究センターの田所敬一さん、東京大学地震研究所の永井悟さん、そして金沢大学大学院自然科学研究科の平松良浩さん。この方々がまとめた研究の内容というのは、本当に水を注入すると地震が起きるのかと、その実証実験を行ったということであります。

 実証実験の場所、この研究の対象として彼らが掲載しているのは三か所です。まず、日本の淡路島の北部にあります野島断層、これは阪神大震災で生じた断層であります。それから、長野県の松代市、ここでは一九七〇年の一月から二月にかけてこの実験が行われています。最後に、ドイツのKTB、これはプロジェクト名でありますが、九四年、行われております。ここを御覧いただければ分かりますように、いずれも一定の量の水を一定の深度に注入した場合、その後四、五日あるいは六、七日、さらにはその後すぐに地震が発生していると。こういう詳細な研究報告を二〇〇二年にジャーナル・オブ・ジオグラフィーに掲載をされているわけでございます。

 注目すべきは、多くの研究に共通をしているんですが、この水ないしは液体を注入した地点からおおむね半径二十キロ付近で地震が発生していると、こういう報告が大変多く上がっているところでございます。

 皆様には配付資料の一ページ目を御覧いただきたいんですが、これはさきの中越地震と中越沖地震の位置関係を記したものですが、下の図です。真ん中にあるマルが長岡市の岩野原基地、地中貯留の地点であります。二つの地震の震央をバツ印で書いてありますが、これは、ちょうど半径二十キロの直線で円を引きますと、まさにこの二つの震央がそこに符合すると。つまり、両地震ともこのCO2の地中貯留地点から二十キロの場所で起きていると、こういうことが判明をしております。


石田が添付


 さて、このように様々な研究例あるいは地震の発生例を見てまいりますと、どうやら地中に何らかの液体を注入した場合、地震発生のリスクをこれは覚悟しなければならないようだという点に気付くわけでありますが、そこでお尋ねをいたします。岩野原でのCCS実証実験に際して、経産省、そしてこの実験を経産省から委託して行った財団法人地球環境産業技術研究機構、略してRITEと呼ばれておりますが、このRITEは地震発生の可能性を調査したのかどうか、また、したとしたら、その報告書はあるのかどうか、お尋ねいたします。

○政府参考人(石田徹君) ただいまのCCSの実証試験についてのお尋ねでございます。

 このCCSそのものを若干補足させていただきますと、先ほど先生も御指摘のように、地球温暖化対策の重要なオプションの一つとして、有望な技術として、私どもその実用化を目指して実証研究を行っているところでございます。今お尋ねの財団法人地球環境産業技術研究機構、これはRITEと言っております、これを通じまして、新潟県長岡市岩野原におきまして、約一万トンの二酸化炭素の貯留実験とそのモニタリングを行ったということは先生御指摘のとおりでございます。

 この実証試験の実施に当たりまして、平成十二年度から十三年度にかけて、このRITEにおきまして、地震の専門家を含む専門家による委員会を設置いたしまして、事業計画の内容を検討いたしております。その際、二酸化炭素圧入予定地域の近傍で過去に行われました石油、天然ガス開発の坑井掘削の結果得られた地質構造に係るデータに基づきます検討でありますとか、あるいは、これは震探調査と言っておりますけれども、弾性波を地中に送って、その反射を計測することによって地中を言わば可視化するというこの震探調査のデータ、結果などを用いて地質構造やあるいは断層の有無に関する検討を行ったものと承知しております。この結果、圧入された二酸化炭素が広がると予想されました範囲内に断層がないことを確認をし、地層内での圧入された二酸化炭素の移動が断層に影響を及ぼす可能性がないことを当時確認をしたというふうに聞いております。

 今お尋ねの報告書でございますけれども、特にこのRITEにおきまして御指摘の地震誘発の可能性について特に取りまとめた報告書というものはございませんけれども、今申し上げたようなことにつきましては、当時の検討に参加した地震の専門家から検討の経緯を直接聴取し、確認をしたものでございます。

○風間直樹君 この実証実験、これだけ研究論文が世界各地で出ているわけでありますので、十分目を通すことは可能だと思います。それに目を通せば、液体あるいは水、これを地中に注入することが何らかの地震誘発のリスクがあるということは分かるわけでありますので、CO2を入れたときにそれが注入孔からどれくらいの場所まで拡散するか、これは調査をされたということでありますが、ではCO2に押し出された水の移動、この点については事前にウオッチされたのか、調査されたのか、その点いかがでしょうか。

○政府参考人(石田徹君) 今お尋ねの点、直接につきましては私、手元にデータがございませんのでお答えいたしかねますけれども、当時、この岩野原につきましては、二酸化炭素圧入地点における圧力変化の予想値から誘発地震が発生する可能性は低いというふうに考えていたということを聞いております。

○風間直樹君 これは、これだけ研究論文が出ているにもかかわらず、その可能性を考慮せずに実験を行っていると、これは極めて大きな問題だと思うわけです。その結果、新潟県では二回の大地震が起きたわけですよ。それで家屋敷を失った方もたくさんいらっしゃる、命を落とした方もいらっしゃる。そういうリスクに対して事前の調査をせずにこの実証実験を結果として行ったということでよろしいんですか。

○政府参考人(石田徹君) 先ほど申し上げましたように、そういう可能性は低いということで考えていたわけですけれども、まさに慎重を期するという観点から、二酸化炭素の広がる範囲内に断層がないということをいろいろなデータを使って確認をしたということでございます。

○風間直樹君 CO2にとどまらず、やはりそれによって押し出された水がどの程度の範囲まで移動する可能性があるのか、その部分についても当然事前の調査をすべきだと思いますし、それをしたのかどうか、後日報告をいただきたいと思います。

 大臣、現実に二回の地震が起きております。これは、やはりこの時点で少なくとも岩野原CCSと地震との因果関係の調査を行うべきだと思うんですね。なぜかといいますと、大臣、所管でありますから御承知のように、今年度経産省が再度この実験の費用を計上している。そして、今後数年間掛けて今度は全国でこの実験を展開するという予定を持っていらっしゃる。もしかすると、全国展開したときに様々な場所で地震を誘発するかもしれない、こういうおそれから私は今日質問しております。大臣、この調査行うべきだと思いますが、岩野原CCSの地震との因果関係、いかがでしょうか。

○国務大臣(甘利明君) 岩野原で、財団法人地球環境産業技術研究機構、いわゆるRITEでありますけれども、このRITEによりまして二酸化炭素を圧入をされた地層と中越地震及び中越沖地震の震源が位置する地層との間には、この二つの間には連続性がなくて、政府としては、二酸化炭素圧入による影響がこれらの地震の震源に及んだというふうには考えておらないわけであります。

 RITEでは、念のために、本年に入りまして、財団法人地震予知総合研究振興会に委託をしまして、岩野原の二酸化炭素圧入地点に設置をしました地震計のデータについて詳細な調査分析を行いました。この結果でありますが、二酸化炭素の圧入前とそれから圧入開始から中越地震が発生するまでの間を比較をしまして、微小な地震の発生回数等に急激な変化がなかったことが確認されているわけでありまして、今後、分析データの範囲を中越地震発生以降にも広げて同様の調査分析を行うというふうに承知をいたしております。

○風間直樹君 大臣、これは従来の地震学説では説明のできない、現時点では、現象なんです。ただし、米国でも日本でも複数の学者の皆さんが様々な調査をされて、注水をしたときには地震を誘発するリスクが非常にあるという研究論文を複数まとめていらっしゃるんです。にもかかわらず、大臣が岩野原CCSと二回の新潟県内の地震との因果関係を調査しないとおっしゃるんであれば、これは将来、私は甘利大臣の政治責任が問われる可能性も出てくると思うんですよ。

 後ほど申しますが、さきに言いましたように、国内に展開する、今後。同時に、先日胡錦濤さんが中国からお見えになったときに、福田総理との間で中国の大慶油田にこの技術を導入するという合意をされているんですね。そうすると、大慶油田にCO2を入れたときに中国で大地震を誘発する可能性すら出てくるわけです。

 ですから、やはり私はこの時点で、未知の領域ですから、繰り返しますが、やはり予断にとらわれず、岩野原CCSと二度の新潟県での地震との因果関係を調査していただくべきだと思いますが、大臣、いま一度御答弁お願いいたします。

○国務大臣(甘利明君) 今申し上げましたように、念のために本年に入りまして地震予知総合研究振興会に委託をしてこの岩野原の二酸化炭素圧入地点での計測データ分析、調査分析を行ったわけであります。その結果、因果関係がないということを類推するような調査結果が出ているわけであります。

 今後、この分析データの範囲を、申し上げましたように、中越地震発生以降にも広げて同様の調査分析を行うということでございます。

○風間直樹君 それでは、その報告書を決算委員会に御提出をお願いしたいと思います。

 委員長、お願いいたします。

○委員長(小川敏夫君) ただいまの申出につきましては、後刻理事会で協議いたします。

[3106]に収録部分

○風間直樹君 過去五年の実験はRITEに委託をしたわけですが、今度行う実験は、事業主体の公募、どんなふうに今進んでいますでしょうか。

○政府参考人(石田徹君) 平成二十年度のこの地中貯留技術研究開発プロジェクトにおきましては、二酸化炭素回収・貯留の実用化のために実証試験の適地の選定に向けて地質データの評価、分析あるいはそのシステム全体のコスト分析等を行う調査研究事業を予定をいたしております。

 この調査研究事業につきましては、現在、事業の公募に向けた公募要領等について精査、検討しているところでございまして、この作業が完了した段階で経済産業省のホームページ等を利用して事業の公募を開始する予定というふうにしております。

○風間直樹君 これ、今年度からの実験の再開始、非常に注目度が高いんです。

 まず新潟県では、恐らくほとんどの自治体がしり込みをするだろうと思います。もっと言いますと、もうほとんど反対、うちでは引き受けたくないと、こういう状況なんですね。

 この新潟県内での実験、これはもう困難になったと私は考えているんですが、そうした認識でよろしいかどうか、いかがでしょうか。

○政府参考人(石田徹君) まさにそれはこれからいろいろな要素を検討して、調査先の選定をしていくことになろうかと思います。

 もとより、地元の自治体の御理解を得ながら進めていくということは、これは当然のことと考えております。

○風間直樹君 今日、この委員会にも新潟県選出の議員が三人いらっしゃるんですね。私は全国比例ですが、塚田一郎先生、それから近藤正道先生と。塚田先生はまさにこの中越沖地震のときが地元で選挙運動をされていらっしゃいますので、直撃をされて、大変な経験をされたわけであります。近藤先生は去年は改選期ではありませんでしたから、ただ、恐らく地元でこの地震を経験されたんだろうと思います。

 今年からまた再度実証実験を開始すると。そうしますと、一体全国のどこでやるのかということが大きな関心事になってくるわけです。加えて、過去五年間、新潟県で埋めたのは一万四百トンのCO2。今度はその十倍の十万トンを埋めるという話なんですね。十万トンを埋めると、当然地震誘発のリスクもそれに伴って私は大きくなるだろうと、こういうふうに思います。

 そこで、二つのお尋ねをいたしますが、この帯水層と呼ばれる水分を多く含んだ層をたくさん有している地域、これが一つの候補になるというふうに思うわけですが、それがどこにたくさんあるかという質問が一つ。それからもう一つ、全国貯留層賦存量調査という調査をこの実証実験の中でされていますが、この貯留候補地点としてどちらの都道府県あるいはどちらの海域が現時点で有望と考えられているのか。その二点をお尋ねいたします。

○政府参考人(石田徹君) 我が国におきまして二酸化炭素の地中貯留に用いることが適していると考えられるいわゆる帯水層の分布でございますが、我が国の沿岸部及び一部の内陸部に広く分布をいたしております。

 財団法人地球環境産業技術研究機構が平成十二年度から昨年度までこの地中貯留技術研究開発プロジェクトの中で調査研究してまいりました全国貯留層賦存量調査におきましては、我が国周辺に約一千五百億トンの貯留ポテンシャルがあるとの結果が出ております。

 その中で、特に貯留に適する地層構造と考えられ、かつ何らかの調査によって既にボーリングによる地質データが存在する地層における貯留可能量は、約五十二億トンというふうに試算をされております。

 この五十二億トンの貯留可能量の分布を大まかに見ますと、例えば北海道で六・二億トン、秋田で五・三億トン、福島で十三・三億トン、新潟が十七・一億トン、沖縄が四・三億トン、その他五・八億トンというようなことになっているわけでございます。


石田が添付

○風間直樹君 今私の手元に、このRITEがまとめた報告書がございます。二酸化炭素地中貯留技術研究開発中間評価資料という報告書です。これはA4の資料で相当の枚数があるんですが、八十四ページありますけれども、この資料をつぶさに見ておりますと、実は非常に詳しく出ているんですね、どういう地点が有望かという。

 今の局長の御答弁にもありましたが、帯水層を多く有する場所として、これ指数で表示をされているんですが、まず北海道の道央地域、指数で三〇五、秋田県四一六、名古屋二五三、南関東二〇一と、これが上位四つの地域であります。賦存量調査の結果としては、海域としては、苫小牧、秋田、新潟、福島。それから、湾としては、大規模な貯留ができると見込まれているのが東京湾、伊勢湾、大阪湾あるいは北部九州。中規模の貯留ができると見込まれているのが福島県の磐城沖から茨城県の鹿島沖にかけての海域、それから大分の別府湾、さらに沖縄本島の東沿岸地域と、こういうふうに載っているわけであります。

 私、大変危惧しておりますことは、CO2のこの地中貯留というのは、御案内のとおり、工場から出る、特に発電所ですね、そこから出るCO2を特殊な技術によって回収して、それを埋立て可能な地域まで運んで、そこに地中貯留すると。そこで問題になるのが輸送コストなわけですね。ですから、この報告書の中でも再三述べられているんですが、排出される工場がたくさんある場所からできるだけ近い地中貯留地点が望ましいと。ということで、今申し上げましたように東京湾、伊勢湾、大阪湾、北部九州と、こういう地域が最有力リストとして上ってきているわけであります。

 ただ、同時に、輸送コストが大きい、だからこの排出源の近くが望ましいということになりますと、どうしてもこれ大都市圏になるんですよ。東京湾、首都東京を抱えています。伊勢湾、大阪湾、北部九州、みんなそうですね。ですから、今後、新たに今年から再実験を開始するに当たって十万トンを埋めると。こういう首都圏とかそういった都市部を抱えた湾部が有力候補になっているということは、私はよくよく慎重に考える必要があるんだろうと思います。

 そこで、最後に大臣にお尋ねをします。さきにも指摘をしましたが、この日中首脳会談におきまして、中国の大慶油田でこのCCSの技術を使ってCO2を油田の中に貯留しようと、こういう合意がなされたわけであります。これは米国のエネルギー省の委託研究にも明らかなように地震を誘発する可能性が多分にあると私は考えておりますが、この中国での貯留に当たって事前に調査を行う必要があるんじゃないでしょうか。最後にこの点もう一回確認して、大臣の御答弁いただきたいと思います。

○国務大臣(甘利明君) フィージビリティースタディーはしっかりやっていきたいというふうに思っております。このCCSに関していろいろな影響を唱えていらっしゃる方、あるいは前向きな研究者も含めて、識者からの聴取はしっかりとしていきたいというふうに思っております。

 産油国でもCCS、EOR、つまり炭酸ガスを注入することによって石油の回収の効率を上げるということについては非常な関心を示しておられますし、また、IPCCの報告でも地球温暖化防止の極めて有効な手段と認識をされています。ポテンシャルからいえば地球全体の排出量の八十年分ぐらいを封じ込めるポテンシャルを持っているということで、現状の危機を未然に防いでいく有力な手だてであると。

 しかし、御指摘のように危惧する部分があるのであるとするならば、いろいろ研究者からの事情を伺って、我々の有する知見においてはきちんと地層を判断すれば心配ないということでありますけれども、安全性、きちっと把握をしながら進めていきたいというふうに思っております。

○風間直樹君 ありがとうございました。終わります。